短編 | ナノ


▼ 愛と依存の狭間


 伏見さんを動物に例えるならば猫だと思う。毛並みの 整った黒猫。しかし野良猫。他人を嫌って踏み込まれたくないからバリアを張って。けれど実は寂しがり屋で構って 欲しかったりして。気まぐれ気分屋伏見さん。もっと甘え てくれてもいいのにな。19歳なんだしなあ。
そんなことを考えながら俺はパチパチとキーボードをタ イプする。今日も資料多いな、伏見さんはこれの倍こなしてるのかと思うと少しゾッとした。出来る男なのは知ってるけど、室長は頼りすぎだと思う。余程、伏見さんに肩入 れしているのだろう。なんて考えてると腹が立ってきた。 俺の、俺の伏見さんに何してくれんですか。ああ、苛々し てきた。けれど俺はポーカーフェイスというか愛想笑いが 得意な方なのでなんとかやり過ごす。ああ、伏見さんを見 るだけで癒される。
 って、いけないいけない。見蕩れてたら仕事が終わらないじゃないか。副長に見つからないうちにまた手を動かし 始める。デスクワークは退屈だけど緊急召集よりはマシかもしれない。
 あ、伏見さんがマグカップに手をつけた。隊の皆はコーヒーを嗜むから伏見さんも例外なくコーヒーだ。だけど コーヒーは苦手なみたいで、こっそり砂糖を入れているの を見かけたことがある。そんなところも可愛くてたまらな い。
  コトンと飲み終わったのかカップを置いて、溜息一つ。 そういえば伏見さんご飯ちゃんと食べてんのかな。ああ やって飲んでるところしか見たことがない。今度食事に 誘ってみよう。未成年だから居酒屋はダメだな、ちぇっ。
 伏見さん、伏見さん、伏見さん。
 何度呼んだって足りやしない。伏見さんが欲しくて欲しくて死にそうだ。
 俺は伏見さんがいないとダメなのだ。 ねえ伏見さん、あなたはどうですか?
 なんて考えてると伏見さんはこちらを向いた。なんて偶然。嬉しくて俺は思わず「すきです」と口パクで言ってやった。
「……馬鹿だろ」そう言ってそっぽ向く伏見さんも愛し い。耳まで真っ赤なんて言ったら殺されちゃいそうだから言ってやんない。
 これからもずっと伏見さんの隣がいいな。俺はそう思いながら温くなったコーヒーをすすった。今日も仕事を頑張ろう。

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